あさいますお著作集「ゲゲの謎」が出版されて1か月が経ちました。美術関係者だけでなく、他の多くの方からご感想を頂き有難く思っています。
出版の大きな動機は兄の供養のためと、私の個人的な過去の整理の為でした。5年前に慣れないパソコンで兄の文章を入力し始めた時は、果たしてどれほどの人が関心を示してくれるのだろうか、とても読めるような内容では無いんではないかと半信半疑でした。読み返せば読み返すほどに不安が拡がって行きます。
それでも、次兄の達夫君や愛知県美術館の石崎さんの励ましのおかげで何とか出版までにこぎつけることが出来ました。
先日、岐阜市の有名料亭のオーナーから「あの本読んだよ。とても面白い。すごい人だ。」と、私に直接電話があり、大変に驚きました。アートというキーワードでは美術も料理も共通しますが、伝統を重んじる日本料理界の重鎮からお褒めの言葉を頂
けるとは思ってもみませんでした。
もはや私の個人的な思いとは別次元にこの本はあるのだなという思いを強くしました。ピラミッド型の既成芸術に反発し、反芸術を唱えアナーキーなパフォーマンスを
繰り返したあさいますおの作品が既成の美術館に展示され収蔵されるという事に彼は居心地の悪さを感じているのではないかとひねくって見たくなります。
どんなにあがいてみても人類の文化は連綿と幾層にも重ねられ、反芸術といえども、またそれが一つの新しい芸術の在り方となって伝統が築かれて行く・・・
常に流動し変化して行く人類の様は128億年の宇宙の歴史からするとほんの一瞬の時にすぎないだろう。